(※前半からの続きです。)
メインストリーム市場への道
キャズムを乗り越え、初期市場からメインストリーム市場へ進むには、戦略的なマーケティングが必要になります。具体的には、メインストリーム市場のなかから、戦略的でニッチなターゲットセグメントを選びだし、そのセグメントの攻略に資源を集中します。ターゲットセグメントの顧客にはホールプロダクトを提示すると共に、競争を作りだして、顧客が商品を買いやすくするようにポジショニングを行います。 そして、ターゲットセグメントでマーケットリーダーの地位を確立したら、そのセグメントでのソリューションを活用できるような次のセグメントを選び出し、ボーリングでピンを倒していくように、次々次々とメインストリームのマーケットを攻略していきます。
セグメントを選定する
セグメンテーションの重要性はマーケティングの授業で強調されるものの、実際にそれを行っている企業は少ない。
しかしキャズムを超える際は、販売量を重視して大きなマーケットを狙うのではなく、「マーケットの支配」を目標にする必要があります。そのため支配しやすい、ニッチなマーケットセグメントを標的とし、マーケットリーダーになる必要があります。
ターゲットとするニッチなマーケットセグメントは、口コミ効果が及ぶ範囲にします。ハイテク製品の購入の際には口コミによる情報がもっとも信頼され利用されるからです。
具体的なターゲットマーケットの選定方法としては、ハイテク製品採用前と採用後のターゲットカスタマーについて記述した具体的なシナリオを出来るだけ多く作成します。そして「ターゲットカスタマー」、「購入の必然性」、「ホールプロダクト」、「競争相手」の点で各シナリオを評価し、高得点のものを「パートナーと連携企業」、「販売チャンネル」「価格設定」「企業のポジショニング」「次なるターゲットカスタマー」で再度評価して選出します。
ホールプロダクトを構築する
キャズムを超える際には、製品重視から市場重視へとマーケティングの視点を移行させてゆく必要がある。
| 製品重視 (初期市場) | 市場重視 (メインストリーム市場) |
|---|---|
| 高性能の製品 使いやすさ 洗練されたアーキテクチャ 製品の価格 ユニークな機能 |
多数の利用者 サードパティーによるサポート デファクトスタンダード TCO(トータルコスト・オブ・オーナーシップ) カスタマーサポート |
その方法のひとつとして、コアプロダクトの周りに、サポートやアフターサービスなどのを含め、実利主義者の「購入の必然性」に答えるホールプロダクトを構築する必要がある。
競争を作りだす
実利主義者は複数の製品を比較するまでは購入の決定を行わない。ベンダーにとって競争相手の存在は必須である。競争相手を作り出して、自社製品を上手くポジショニングする必要がある。競争相手には代替手段と対抗製品がある。たとえばシリコングラフィックス社の映像処理ワークステーションであれば、手作業でのフィルム編集が代替手段であり、サンやHPなどの汎用ワークステーションが対抗製品である。代替手段が存在することによって、ターゲットカスタマーを定義しやすくなり、顧客に「購入の必然性」提示できる、また対抗製品があることで、新しいテクノロジーに対して信憑性が高まり、差別化(より高度なサービスの提供)が可能となる。自社、代替手段、対抗製品の三者の対比を用いて、自社製品を上手くポジショニングすることができる。
競争力を高めるポジショニング
以下のポジションステートメントのテンプレートを埋められるようにする。
これは、「①」で問題を抱えている「②」向けの、「③」の製品であり、「④」することができる。そして、「⑤」とは違って、この製品には、「⑥」が備わっている。
上記の六つの空白には、それぞれ、①現在、市場に流通している「代替手段」、②橋頭保となるターゲット・カスタマー、③この製品のカテゴリ、④この製品が解決できること、⑤対抗製品、⑥ホールプロダクトの主だった機能、を記入する
シリコングラフィックス社の場合: これは、「撮影した映画フィルムの編集」で問題を抱えている「フィルム編集技術者」向けの、「デジタル編集システム」の製品であり、「映像をいかようにも作りだす」ことができる。そして、「サン、HP、IBMなどのワークステーション」とは違って、この製品には、「他のフィルム編集機器と接続するためのインターフェース」が備わっている。
上記のポジションステートメントからそれないようにキャッチコピーなどを考える。PRの際は、実利主義者の関心事に合わせて、「この新製品に注目!」ではなく、「この新市場に注目!(新市場についての簡単な説明とホールプロダクトの紹介、新しい時代の波がそこまでやってきており、その波に乗った者はみな大成功を収める)」とPRする。ベンダーの製品はホールプロダクトの中核に位置している必要はなく、必要不可欠な部品であればいい。
販売チャンネルの選択
キャズムを超えるときの販売チャンネルは以下のようにすと好ましい。
- ベンダーは、自社の営業部隊とサポートチームを使って、橋頭保となるべきターゲット・セグメントに需要を作りだす。
- ベンダーがそのセグメントにおけるマーケット・リーダーであることをターゲット・カスタマーが認識するようになったら、主たる販売チャネルを、もっとも効率的に製品を販売できるチャネルに移行する。
製品価格は、その時点でのマーケットリーダーの価格付近に設定し、自分がマーケットリーダーであることを表す。また、利潤の中で販売チャネルへの報酬が占める部分を大きくして販売チャネルを優遇する。製品が浸透した段階で、販売チャンネルへの報酬を元に戻す。
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