概要
著者によると、現代を理解するには<私>という視点が欠かせない。その<私>は、自分の「かけがえのなさ」や「自分らしさ」「オンリーワン」といった他人とは違う特別な存在であることを強く求める一方で、同じく「オンリーワン」だと思っている大勢のうちの一人にすぎないこともわかっている不安定な存在なのだという。
そして、このような現代の「個人主義」は、<私>が集まった<私たち>の問題である政治を困難なものとしていく。社会的な問題が、個人の内面的な問題に還元され、一人ひとりが様々な問題と不満を抱えていても、その不満はあくまで個人的なものとされ、不満を結び付けて社会を変える力にまとめ上げるのは困難となる。結果、政治が機能不全を起こす。
最近の日本の政党政治における政策の脈略のなさ整合性のなさは、団結することのない不安定な個人の不満が、うつろいやすい民意しか形勢しないことにあるという。政治が不安定な個人の不満を受け止めるには、<私>と<私たち>の間に「社会」を取り戻すことが必要だという。
感想
本書の前半では、19世紀のフランスの政治思想家で、アメリカ社会の観察者であったトクヴィルの「平等化」の概念を参照しつつ、現代日本の「個人主義」を分析しています。この部分は興味深く読め、かなり納得できました。
また、最後に書かれているデモクラシーの理念、他者の発見による自己批判と自己変革がデモクラシーである、という理念も説得力があります。
ただ、分断化された<私>を「デモクラシー」につなげる為に「社会」の再興が必要であるにしても、「リスペクト」と「共感」を元に自分を他人に繋げていくというのでは、単に弱者やマイノリティーなどが排除された、同質な仲間内ができるだけなのでは? という疑念が浮かびます。
私としては、啓蒙主義時代の普遍的な価値観を、もっと大事にするべきなのではないかと、漠然と考えたりします。
ともあれ本書の問題提起は、大変重要なものと感じました。



