最近、ニコラス・カーの「クラウド化する世界」(原題:THE BIG SWITCH – Rewiring the World, from Edison to Google)を読んだのですが、有益な示唆がたくさんありました。
クラウドとは何か
「クラウド」とは、複数のコンピューターを1つの大きなコンピューターにまとめた上で、計算能力をネットワーク経由で貸し出すユーティリティー事業です。「クラウド化する世界」には「クラウド」という言葉はほとんど出てきません。代わりに「ユーティリティー事業者」という言葉が数多く出てきます。
クライアント・サーバーシステムの非効率性
なぜ、コンピューティングのユーティリティー事業者が必要とされているのか?それは、現在主流の企業内C/S(クライアント・サーバー)システムが、複雑で非効率なシステムだからです。
メインフレーム時代はコンピューターは企業に1台だけなので、話は単純でした。しかし、現在は個人がパソコンを持ち、企業内の各種サーバーにつながっています。クライアントのパソコンが多数であるのは勿論のこと、サーバーも沢山の数があり、その間の相互接続は複雑です。
また、各サーバー間の利用率(負荷率)はバラバラで、一部のサーバーの負荷が能力の限界値ぎりぎりで運用される一方、ほとんどのサーバーは負荷率が低いまま運用されています。つまり、非常に効率が悪いのです。
この非効率性は企業内のサーバー間のみならず、企業間にも見られます。各企業で情報システムの利用度合いが異なるにも関わらず、今まで個別企業が自前で似たような情報システム構築し運用してきました。
クラウドによる規模の経済の実現
クラウドはこの非効率を解消します。企業は情報システムを自前で所有せず、ユーティリティー事業者から必要に応じて借りて利用することになります。ユーティリティー事業者は、保有する膨大な数のコンピュータを内部ネットワークを通してシームレスに接続し、最適に負荷が分散される「1つの大きなコンピューター」として動くように設計します。この設計のおかげで、事業者は保有する各コンピューターの利用率を高くたもち、「規模の利益」の経済性を実現します。
経済性がイノベーションを規定する
要するに「クラウド」とは、コンピューティングにおける経済性の追求にほかなりません。「クラウド化する世界」ではコンピューティングを、20世紀初期の「電気」にたとえます。送電ネットワークの発達と共に、各企業が所有していた発電機を廃棄して、大規模な発電所で生み出された安価な電気を利用するようになった経緯を描写することで、テクノロジーが経済性から逃れられないことを説明します。
ここまでが、上記の本の前半部分。
残りの後半は、ユーティリティーコンピューティングが実現した社会でのネガティブな話を、これでもかと提示します。格差の拡大やプライバシー問題、国家の関わりに、コンピューターが人間のために働くのではなく、コンピューターの為に人間が働く可能性。これらの話はたいへん興味深けど、複雑な問題で語りにくいですね。


